事務所ブログ

2014年11月21日 金曜日

刑事事件9 「人質司法」と言われる理由

 日本の刑事司法は「人質司法」だと批判されることがあります。
 簡単に言うと、逮捕・勾留による身体拘束が、事件について自白させることなど捜査機関に利用されている仕組みです。
 これは法律的にはどのような仕組みによるものでしょうか。
 ポイントとなるのは、勾留の理由です。
 罪証隠滅のおそれ、つまり証拠隠滅をする可能性がある場合は勾留することができるとされています。
 ここで、仮に身に覚えのないことで突然逮捕されたとします。
 えん罪ですので、当然そんなことはやってないと言うことになります。法律的には「否認」と言われます。
 ところが、そうすることで罪証隠滅のおそれがあるとされやすくなってしまいます。
 例えば、やっていないと嘘をついているのではないか、そうすると、嘘と辻褄を合わせるために拘束をしておかないと証拠隠滅をするかもしれないなどと考えられます。
 しかし、捕まった側からすれば、身に覚えのないことなので証拠隠滅も何もありません。

 勾留される期間についても、少なくとも10日間ですが、否認ということになると延長され、20日間拘束されるのがほとんどでしょう。
 さらに、自白すれば罰金刑などで済み、長くても20日の勾留で釈放されるところが、否認ということになると正式な裁判を受けることになる可能性が高く、そうなると保釈されない限り裁判が終わるまで拘束が続きますので、20日間どころか数か月は拘束が続くことになります。
 突然20日間も仕事を休むことになったらどうなるでしょう。
 それも、20日間だけなら職場によほど理解があれば待ってくれるかもしれませんが、否認を続けて正式裁判になってさらに数か月も拘束されるかもしれません。
 保釈にしても、結局は勾留の理由と同じで、否認をしていると罪証隠滅のおそれがあるとされやすく、認められにくいのが現実です。
 仕事はクビになり、家族の生活はぼろぼろになるかもしれません。
 そうでなくても、突然日常生活から引き離され、自由のない特異な環境に置かれるというのは肉体的にも精神的にも大きな負担となるものです。
 そうなると、早期の釈放によって自分と家族の生活を守るためには、やっていないことでもやったと嘘をつくこともやむを得ないと思えてしまうこともあるでしょう。
 このように、法律上の仕組みを利用し、自身の身柄を人質に自白などを迫られる状況が作られることから「人質司法」と呼ばれるわけです。

 弁護士 松島俊行

投稿者 大宮桜木町法律事務所

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