事務所ブログ

2016年12月22日 木曜日

相続分野における判例変更 「預貯金は遺産分割の対象か」


先日,相続の分野において,重要な最高裁判例が出されました。

「預貯金が遺産分割の対象になるか」という問題です。


1.これまでの判例実務

この記事の題名をみて,当然に対象になると思われる方も多いと思います。

というのも,相続の場で,預貯金が遺産分割協議の場に出てこない案件というのはまれです。むしろ,多くのケースで預金は遺産分割の対象とされております。

しかし,理論上,預貯金は可分債権であって,相続と同時に当然に各相続人に分割されるのであって,当然には遺産の対象にならないというのがこれまでの最高裁判例だったのです。

その結果,遺産分割協議中であっても,相続人の一人は,銀行を相手に自己の相続した預金債権の払戻を請求することができました(もっとも,銀行は任意の払い戻しに応じませんので,払い戻しを実現するためには裁判が必要となります。)。

このように,預金は当然には遺産とはならないというのがこれまでの判例で,実務では,相続人間の合意があることを理由に預金を遺産分割の対象としていたのです。


2.問題の所在

それでは,預貯金を遺産に含めるか否かで揉めるケース(相続人間で預貯金を遺産とする合意ができない場合)というのはどのようなケースでしょうか。

まさに今回の最高裁判例の事案が典型例といえますので,紹介したいと思います。


3.「平成28年12月19日 最高裁大法廷決定」の事案

被相続人は父親です。父親が死亡して相続人は2名です。
相続人が少し複雑です。一方は,被相続人の弟Aの子です。もう一方は,被相続人の妹Bの子です。いずれも被相続人との間で養子縁組が結ばれておりました。

遺産は,預貯金と不動産でした。遺産の額は,預金が合計で250万弱,不動産の価額は258万1995円でした。

ここからがポイントですが,被相続人は,生前,Bに5500万円の生前贈与をしておりました。
この生前贈与はいわゆる特別受益とされます。その結果,本来であれば,同額を遺産に持ち戻し,贈与を受けていた者は,自己の相続分から贈与額を差し引かれることになります。

生前贈与を受けていないAの子は,B側の特別受益を主張することになります。
具体的には,今回の遺産分割でB側の特別受益を理由に不動産はAの子が取得するべきと主張しました。

しかし,Bの子は先ほどの従来の最高裁を前提に争いました。

具体的には,預金は,相続人間で遺産分割の対象とする旨の合意がない限り遺産に含まれない。Aの子とBの子で合意が成立していない以上,生前贈与を受けたBの子は相続開始と同時に当然に相続人が相続分に応じて預貯金を分割取得すると主張して争ったのです。

原審である大阪高等裁判所は,従来の最高裁判決を理由にAの子の主張を認めませんでした。


4.判例変更

今回の最高裁判決は,判例変更をし,以下のとおり判示して本件を大阪高等裁判所に差し戻しました。

「共同相続された普通預金債権,通帳貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」

今回の最高裁判例は,預金債権の内容・性質,共同相続人間の実質的公平などの観点から上記判例変更を行いました。
興味のある方は実際の判決文を参照されるとよいと思います。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf

大宮桜木町法律事務所
弁護士小川武士
電話  048-783-3523
メール info@os-law.jp



投稿者 大宮桜木町法律事務所

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