事務所ブログ

2017年2月 6日 月曜日

節税目的の養子縁組の有効性 最高裁判例

節税目的の養子縁組を有効とした最高裁判例 事案の概要
 
 今回養親となったAさんは、妻が既に死亡しており、長男、長女(被上告人)、二女(被上告人)の三人の子供がいました。

長男には妻と子供(上告人)がおり、子供はAさんの孫となります。

今回、長男夫妻、子供(上告人)及びAさんは、税理士から、子供(上告人)をAさんの養子とした場合に、遺産に係る基礎控除額が増えることなどによる相続税の節税効果がある旨説明を受けました。

それを受け、孫である子供(上告人)はAさんの養子となりました。

これに対し、長女、二女の被上告人らが、Aさんと子供(上告人)の養子縁組は、縁組の意思を欠き、無効であるとして争いました。


節税目的と養子縁組の有効性に関する問題の所在

節税目的があるような場合、民法802条1号の「縁組の意思」を欠き、養子縁組が無効となるか否か

民法802条
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
1号 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。


これまでの裁判例

節税目的のある養子縁組の有効性について、これまで高裁レベルの裁判例はありますが、最高裁判例はありませんでした。

東京高裁平成12年7月14日決定(有効)

本件養子縁組が相続税の負担を軽減する目的で行われたとするが、当該養子縁組がそのような動機のもとに行われたとしても、直ちにそのような養子縁組が無効となるものではないうえ、本件記録によっても、本件養子縁組が養親子関係を設定する効果意思を欠くものであるとはいい難く、本件養子縁組をもって無効であるということはできない」(一部省略)

節税目的でないが、縁組意思が否定された裁判例(無効)
節税目的の養子縁組とは異なりますが、専ら相続のみを目的として行われた養子縁組は縁組の意思を欠き、無効としております。

大阪高裁平成21年5月15日判決

「民法八〇二条一号にいう「縁組をする意思」(縁組意思)とは、真に社会通念上親子であると認められる関係の設定を欲する意思をいうものと解すべきであり、したがって、たとえ縁組の届出自体について当事者間に意思の合致があり、ひいては、当事者間に、一応法律上の親子という身分関係を設定する意思があったといえる場合であっても、それが、単に他の目的を達するための便法として用いられたもので、真に親子関係の設定を欲する意思に基づくものでなかった場合には、縁組は、当事者の縁組意思を欠くものとして、その効力を生じないものと解すべきである。」
                                      ↓
「そして、親子関係は必ずしも共同生活を前提とするものではないから、養子縁組が、主として相続や扶養といった財産的な関係を築くことを目的とするものであっても、直ちに縁組意思に欠けるということはできないが、当事者間に財産的な関係以外に親子としての人間関係を築く意思が全くなく、純粋に財産的な法律関係を作出することのみを目的とする場合には、縁組意思があるということはできない。」
                                      ↓
・養親と養子との間に全く交流がなかった。
・両者の間に親子という身分関係の設定の基礎となるような人間関係は存在していなかった。
・養子縁組がされた後も、両者が親族として交流した形跡は全くない。
・養子が、養親の死亡の翌日にその貯金を解約してこれを事実上取得し、その他の養親の遺産についても速やかに相続の手続を取っている。
                                      ↓
専ら、身寄りのない養親の財産を養子に相続させることのみを目的として行われたものと推認するほかはなく、縁組の意思を欠き、養子縁組は無効


平成29年1月29日 最高裁判決の内容

「相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは併存し得るものである。」
                                      ↓
                                  したがって
                                      ↓
専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」


最高裁判決の位置づけ

判決の内容自体は新しいものではなく、例に挙げた東京高裁の裁判例の枠組みを最高裁として是認したものと考えられます。
ただ、アドバイスをする弁護士、税理士としては、この判決をもって、節税目的の養子縁組はどのような場合でも有効と断定すべきではありません。

あくまでケースバイケースで、上記大阪高裁の裁判例など、事案の内容によっては最高裁判決の枠組みを前提としても、養子縁組が無効となる余地はあるものといえます。
ポイントは、養子と養親の関係性であると考えられます。

大宮桜木町法律事務所
弁護士小川武士
電話  048-783-3523
メール info@os-law.jp


投稿者 大宮桜木町法律事務所

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