労働問題

2014年10月28日 火曜日

最高裁の判例(労働事件の重要判例)

先日、労働事件で重要な最高裁判例(以下、「本件」といいます。)が示されました。

 本件では、理学療法士である原告が、第二子を妊娠をしたことから、事業主に対し、労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を求めました。それに当たり、それまでの副主任(管理職)の職位を免ぜられたのですが、育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことなどが男女雇用機会均等法9条3項の不利益取り扱いに当たるとして提訴したものです。

 労働基準法65条3項
「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。」

男女雇用機会均等法9条3項
「事業主は、その雇用する女性が妊娠したこと、出産したこと労働基準法第65条第1項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない。」。

 最高裁は、男女雇用機会均等法9条3項の不利益変更の禁止が単なる努力義務でなく、違反すれば当該措置が無効となる「強行規定」であることを前提として、不利益変更に当たるか否かについて以下のような原則・例外の判断基準を示しました。

原則
「一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ、上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取り扱いに当たるものと解される」

例外1
「当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の軽易や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」

または

例外2
「事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき」
には男女雇用機会均等法9条3項が禁止する取り扱いに当たらない。

 本件の高裁判決では、副主任を免じた措置は、原告の同意を得た上での人事配置上の必要性に基づく裁量の範囲内であるとして原告の請求を棄却しました。

 しかし、最高裁は、本件の事実関係を上記判断基準にあてはめた上で、上記例外1,2の特段の事情の存在について十分審理されておらず、審理不尽の結果、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、高裁に差し戻しをしました。


 弁護士は、法律の条文とともに、「判例」も重視します。とりわけ、最高裁の判例で判断基準等が示されると、それをもとに交渉、裁判等が進んでいくことになりますので、必須の知識となります。
 判例については、単に知識として知っているレベルもありますし、重要な判例については、学者や実務家の評釈を読み込むことになります。

 また、案件に臨むときには、必ず、類似の裁判例があるかも調査します。つまり、類似事案でこちらに有利な判断が示されている裁判例があれば、それを説得材料として主張していくわけです。また、どのような事実を重視して判決を書いたかも参考になります。
 
弁護士小川武士

投稿者 大宮桜木町法律事務所 | 記事URL

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